政治は私たちの問題ネットワーク

◆◆◆みどりの風 NO.6◆◆◆
2000.11.1
市町村合併に思う
 平成11年7月16日「地方分権一括法」が公布され本年4月1日施行されることになりました。
この法律は明治以来の中央集権的行政システムを地方分権型へ転換するものであり、きわめて重要な法律であります。分権型社会の構築は、21世紀に向けての新たな時代の要請であり行政システムの抜本的改革であります。即ち、国・都道府県・市町村の関係が上下、主従の関係から対等協力の関係へ、そいて中央省庁主導の縦割りの画一的行政システムへの転換が、この法律の主旨であるといわれています。
それは「(1)民主主義の徹底(2)地方自治の本旨の実現(3)国、地方に通ずる行政改革の推進による国民負担増の軽減を目ざすものである」と政府は主張します。しかし「地方のことは地方へ」という底流には600兆円余にものぼる借金という国の財政事情が大きく働いているのです。国は「地方自治体」に早く自立してもらいたいのです。弱小な自治体は国の仕送りである「地方交付税」や「補助金」にその財政のほとんどをおんぶしているのです。果たしてこのままで21世紀の超高齢化社会を乗り切ることができるか。
このままでは立ちゆかなくなることは自明の理であります。
それゆえ、国は、「地方自治体」に行政基盤を確立し自立してもらいたいのです。その、なりふりかまわぬ様相は「合併特例法」などにみられる「市町村合併の推進」にあらわれています。国がやれというからやるのか?国がやれというても、なにやらうさん臭いからやらないのか。
私はそういう短絡的な発想ではなく社会の様相をもっと歴史的にとらえたいと思うのです。そして30年、50年、100年先の長いサイクルを考えて「合併」はするべきと考えます。モータリゼイションによる生活圏の拡大、第2次産業革命ともいわれるインターネットに象徴される情報革命、グローバル化する社会、迫りくる超少子・超高齢化、そのような社会状況の中で国の仕送りを減らされ分権化され、自立をよぎなくされた自治体はどうすればいいのでいょうか。求められるのは、効率的でなおかつ質の高い必要にして十分な行政サービスの達成であり持続であります。果たしてそれは可能なのでしょうか。それらをなし得るには私たちは一体何をすべきでありましょうか。私は何にもまして必要なのは「人」即ち人的資源であると思うのです。「合併」によって誕生した広いエリアの中から、行政は行政の、企業は企業の、市民は市民の様々な分野からそれぞれの草の根の声を汲み取り集合する優れたリーダーが育つでありましょう。そして今までのような「行政」と「住民」というサービスを与える者、受ける者という対立軸を超えて共に知恵を出し合い手をたずさえて福祉や環境・教育について議論し対話を深めることによって成長するのです。そして未来の人たちに胸をはってこの美しい「郷土」を残せるような21世紀を向かえるために、私は「合併」というものを考えるのです。

みどり政経塾講義(地方自治の理想と現実【上】)
 政治というものは、地方が治まってはじめて国全体がうまく治まるものである。戦国時代を想起すればよくわかる。従って地方自治は民主主義の根源であり、基礎であり、「民主主義の学校」といわれている。欧米では、民主政治は地方自治からはじまって、国の政治に及ぶのが自然の流れであった。明治憲法では地方自治について特に規定はしていないが、日本国憲法では特に一章を設けて基本的なことを規定している。
 憲法92条では、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める」としている。都道府県や市町村の地方公共団体は自由に行動するのではなく、国の法律である「地方自治法」に従い「地方自治の本旨」に基づいて行政を執行するべきとしている。
「地方自治の本旨」とは何か。教科書では「住民自治」と「団体自治」であると説明している。「住民自治」とは住民の「自己統治」すなわち自治・自律を本質とする。従って地方行政は中央政府の官僚によってではなく、その地方の住民または代表者の意思に基づくのである。「団体自治」とは国の一定地域を基礎とする独立の団体が設けられ、その団体(都道府県・市町村)の事務を国の支配から離れて自主的に団体自らの機関によりその責任において処理することをいう。この憲法の理想は現実の行政では、どのように実現されているのか。あるいは歪められているであろうか。
なるほど都道府県や市町村は「法人格」を与えられ、独立した団体として自らの事務を処理している。しかし、人事においては県の場合、総務部長をはじめ要所要所は国から出向してきた職員がとりしきっている。もちろん県民の代表である知事の意思に基づくことになっていて違憲性はない。しかし、実態は「国の官僚政治が大きくものを言っている」といってもいいすぎではない。財政においてはどうであろうか。地方税は全歳入の3割程度で地方交付税や補助金に依存している。地方交付税も法で決められ一見して厳正に執行されているようだが、地方交付税の算定上の基礎となる基準財政需要額を計算する場合補正係数をいかにするかで、金額が相当にかわってくる。そこに何らかの裁量余地がある。国の命令をよくきく自治体、天下り人事を受け入れる自治体、自治省OBの暗躍、出身地の国会議員の実力等々がその裁量行為を左右すると思われる。いわゆる地方交付税に色をつけるのである。これこそが自治省の力の源泉であり、地方交付税を中央支配の道具として自治体に隠然とした影響力を行使するゆえんである。「真の意味の地方自治をゆがめている」と言えるかもしれない。憲法上地方自治が認められている以上、国家の監督はできるだけさしひかえられ、住民の参加決定権が拡充されなければならない。今のように国家が地方自治体に強大な発言をもつことは「地方自治の本旨」に基づくと果たして言えるだろうか。(以下次号)

編集後記
 はやいもので、もう11月、すぐに師走です。20世紀がとうとう終わります。連続しているとはいえ、新しい世紀を迎えるために、人間や地球の未来について考えてみてはどうでしょうか。編集部へご投稿ください。


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